サッシの断熱性能について

■アルミサッシと樹脂サッシを比較すると材料としての熱伝導率が1000倍違うので樹脂サッシが良い。?
・・・・確かに樹脂サッシは高性能ですが高価です。

■アルミサッシと木製サッシを比較すると材料としての熱伝導率が1000倍違うので木製サッシが良い。?
・・・・確かに木製サッシは高性能ですが高価です。

どちらにしてもサッシのフレーム部(枠と障子)の形状・召し合わせが複雑な事や複層ガラスのスペーサーによる熱橋による影響がある為、単純に比較できません。
それを納得の上でサッシの「フレーム部のみの熱貫流率」を大雑把に逆算し比較してみます。

<比較検討>


(前提)
『一般財団法人建築環境・省エネルギー機構=IBEC』の数値を使用する。
サッシの断熱性能試験の試験体サイズの「1713サイズ」(W1.7m H1.3m)を基準とする。

窓面積=1.7mX1.3m=2.21m2

ペアガラス A6(中空層6mm)・ ペアガラス中央部の熱貫流率 3.4W/m2kとする。

窓面積の20%がフレーム部(枠と障子)の見付面積であるとして単純面積比で試算する。

サッシの熱抵抗は、ガラス部(ガラス中央部+ガラス周辺部)とフレーム部(枠と障子)に分類します。

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①アルミサッシの場合の熱貫流率
W1.70mxH1.30m
 <計算式>
(ガラス部熱貫流率合計+フレーム部の熱貫流率合計)÷(窓面積)=窓全体の平均熱貫流率

{(1.7x1.3)x0.80x3.4+(1.7x1.3)x0.20x(X)}÷(1.7x1.3)=4.65W/m2k(IBEC値)

(X)アルミサッシのフレーム部の熱貫流率 ≒9.65W/m2k

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②「アルミ+樹脂」の複合サッシの場合の熱貫流率
W1.70mxH1.30m
{(1.7x1.3)x0.80x3.4+(1.7x1.3)x0.20x(XY)}÷(1.7x1.3)=4.07W/m2k(IBEC値)

(XY)「アルミ+樹脂」の複合サッシのフレーム部の熱貫流率 ≒6.75W/m2k

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③樹脂・木製サッシの場合の熱貫流率
W1.70mxH1.30m
{(1.7x1.3)x0.80x3.4+(1.7x1.3)x0.20x(Y)}÷(1.7x1.3)=3.49W/m2k(IBEC値)

(Y)樹脂・木製サッシのフレーム部の熱貫流率 ≒3.85W/m2k

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アルミサッシのフレーム部の熱貫流率(X=9.65) ÷ 樹脂サッシのフレーム部の熱貫流率(Y=3.85) ≒2.5倍

フレーム部だけで比較すると「アルミ」と「樹脂・木製」では単位面積当たりの熱貫流率が2.5倍も違います。 (小南先生の論文によると3倍程度の違いがあります。)

「(アルミ+樹脂)複合サッシ」の場合は「アルミ」と「樹脂・木製」の中間に位置します。

サッシのフレーム部としての熱貫流率は材料の熱伝導率の比率(約1000倍)にはならないという事です。

アルミサッシの場合、フレーム部が全てガラスだと仮定して比較すると
アルミサッシのフレーム部熱貫流率(X=9.65) ÷ ペアガラス部の熱貫流率(3.40) ≒2.838倍
フレーム部の見付け面積が2.838倍増加した「フレームなしの窓」に匹敵します。

要するに「窓面積=1.7mX1.3m=2.21m2」がガラス換算面積 =(1.7x1.3)x0.80+(1.7x1.3)x0.20x2.838=1.768+1.254=3.022m2に増加したものと見なせます。
窓の幅が1.7m固定だとすると窓高さH=3.022÷1.7=1.78mとなります。
「アルミサッシの腰窓」は「ペアガラスだけのテラス窓」と同じ熱損失があると言えます。

又、断熱材のない中空の壁(構造用合板9mm+中空層105mm+石膏ボード12.5mm)の熱貫流率=2.83W/m2kと比較しますと
「ペアガラスのみと仮定した窓」は「断熱施工の無い壁(一般的に欠陥壁といいます)」より1.20倍「3.40W/m2k÷2.83W/m2k=1.20倍」熱が伝わり易くなります。

断熱材のある壁(構造用合板9mm+グラスウール16K層105mm+石膏ボード12.5mm)の熱貫流率=0.40W/m2k(躯体の熱橋を考慮すると0.49W/m2k)と比較しますと
「ペアガラスのみと仮定した窓」は「グラスウール16K断熱施工の壁」より6.93倍「3.40W/m2k÷0.49W/m2k=6.93倍」熱が伝わり易くなります。

開口部(窓・ドア)の設計が非常に重要になるという事です。


<サッシのサイズによる影響について>


大きなテラスサッシではフレーム部の面積比率が小さくなりますが、逆に小窓にするとフレーム部の面積比率が大きくなるので注意が必要です。

住宅1棟の全窓面積の合計が同じ場合、小窓アルミサッシを多用した場合と同じ面積でテラスサッシとした場合を比較しますと小窓アルミサッシを多用した場合の方が実際の熱貫流は増加します。

小窓アルミサッシを多用してデザインを凝る場合は「(アルミ+樹脂)複合サッシ」や「樹脂サッシ」を使うなどしてフレーム部の熱貫流の影響を考慮するよう心がけたいですね。

現在、IBECではサッシの熱貫流率をフレーム部とガラス部を合わせて平準化し表示しています。又、木製サッシと樹脂サッシは同じ性能として表記されています。

問題なのは防火指定の関係で簡単に樹脂サッシや木製サッシが使用できないという法的制限です。
(一部防火認定のある樹脂サッシや木製サッシはありますが、形状も限られていて且つ高価です。自由に使うという環境ではありません。)
この制限が規制緩和されない限りアルミサッシの呪縛から逃れられないという事です。

将来、樹脂・木製サッシの使用制限が緩和され防火制限内でも自由に使えるような環境が整えば、流通も増えますし競争原理も働き樹脂・木製サッシも安価になると思います。

現状では、特例を受けた商品以外は法規制の制限範囲外で利用するしかありません。


<サッシの選定にあたって>


最近一般的になりつつある「アルミサッシ+ペアガラス空気層6mm」であっても熱損失が大きいです。

アルミサッシを使用する場合は、
■樹脂複合サッシ(外側がアルミ、内側が樹脂という製品)か
■断熱アルミサッシ(サッシフレーム中間部に樹脂製の絶縁材を挟んでヒートブリッジを防いでいる)以上を選択し、
■ガラスはペアガラスの空気層12mm+低放射ガラス(Low-Eガラス)としたいです。
■これが重要なのですが、、引き違いサッシより実際の気密性能が良い開きやドレーキップを選択したいです。

又、外部には雨戸かシャッターを設ると断熱効果があがります。
出来れば室内側に樹脂内窓か障子を設けるとより一層断熱効果があがります。